あたしたちのシンデレラを書いて

シンデレラという映画を(テレビで)見ました。

なんか、あたしたちの中ではシンデレラって「姉の踵を切り落としたお姫様」のイメージが強すぎて、そのイメージをアウトプットしたい!と思いましてね。

ちょうど時間も多くあるので、実際に短編(1万字近いですが)として書いてみた次第です。

 

漫然と、なにか物語が書きたいと思ってて、出来の良し悪しとかディズニー映画のシンデレラ像ぶち壊しとかはさておき、あたしたちなりの解釈でシンデレラという物語を書いてみたわけです。

 

大筋としては、wikipediaあたりで知恵をつけて書いてみたんですが、

まぁ、お母さんと死別して、お父さんとも死別して、その再婚相手の継母と、血の繋がらない姉に虐げられ、お城のパーティに忍び込み、王子様に見初められ、ガラスの靴を落とし、見つけてもらうわけなんですよね。

 

そこで、あたしたちのシンデレラでは、お母様が非常に病弱であったと設定に入れました。死因自体は、当時の流行り病ということにして、あまり近寄ってはいけないもの、としました。

父親は善意と愛情から、病を持つ母親に近づけたくない一心と、強く生きて欲しい願いを愛娘に託すわけですが、ここで娘のシンデレラは、自分自身に強烈な暗示(呪い)をかけてしまうわけです。

つまり、母親が死んだ直接の原因は自分で、臍の緒から母親の養分を吸い尽くしたばっかりに、母親を殺してしまったと思い込んだわけです。

 

そして父親も死にましたが、母親ほどの強烈なイメージは持ちません。あっさりとその死を受け入れられたのは、自分は他人の養分を吸って生き長らえる化け物なのではないかという不安が、既にシンデレラを蝕んでいたからです。

それよりも、父親に再婚相手がいたことに驚き、おそらく当時としては珍しくない再婚ということも「恥知らず」だと糾弾します。なぜなら、自分は母親の死から逃れられず、家からも逃げられず、荊のトゲに全身を引き裂かれているのに、父親がその責め苦から逃げたことを恥だと思っているのですね。

 

年頃になり、私はもうお嬢様ではないのだから、と周りを突き放すようになります。する必要のない農作業や家事をし、男に混じって薪割りをすることで、自分一人で生きていく決心をするのです。

父親も喪い、天涯孤独の身になったシンデレラは、母親を亡くした責め苦により、孤独に生きる覚悟を決めます。

 

でもそこに現れたのは、父親の再婚相手である継母と姉たちです。

継母は「私たちのことを無理に家族と思う必要はない」と言いますが、シンデレラと離れて暮らそうとはしません。天涯孤独に生きるシンデレラを思ってのことですが、シンデレラはそれらをはねつけます。

二人の姉も、家族として接するようにしますが、容姿がシンデレラよりも劣っており、都会風の佇まいから「売春婦のよう」だとシンデレラに一蹴されます。上の姉に至っては、なにげなく声をかけたことがシンデレラの逆鱗に触れ、玄関先に追い出され、熱いバターを頭からかけられます。シンデレラにとって、パンにバターをつけるかつけないかは瑣末な問題でしたが、継母たちのすることなすことがいちいちと気に食わないのでした。

 

シンデレラは父親の商売を継ぎ、畑仕事と並行して、社長業(のようなもの)をするようになります。とはいえ、事業を大きくすることも考えておらず、社員と自分の食い扶持を確保するためにやっているだけで、商売はさほど大きく動きません。ダンスパーティーでも、ちょっと顔見知りとお喋りをしたくらいで済んでしまう程度のもので、それよりもシンデレラは「男のように働けば、女の私なんてすぐに病んでしまうだろう」と考えます。ですから、女だてらに男として生きることに対して、特別な思いはありません。ただ、自分の身を粉にしたいだけなのです。(遅かれ早かれ、会社は潰れてしまうでしょう。)

 

シンデレラは、お城に招かれるまでになった自分の商売人としての立ち位置にも苦悩をします。母親を殺した罪をあがなうだけでやっている仕事が、シンデレラに地位と安定をもたらしたのです。これではシンデレラは不幸にはなれません。

お城で王子様と初対面を果たしますが、いけすかない優男だけど、悪くないかもな、程度に受け入れます。

そこでもまた、シンデレラにとって嬉しくない誤算が生まれます。この男とだったら、自分の人生を楽しく生きられるようになるかもしれない、と思った男が、この国の王子だったのです。シンデレラは苦悩します。幸せへの階段を上がっていくことに恐怖したのです。シンデレラにとって、自分は生き血を啜る化け物だという認識は、冗談でもなんでもなく、ましてや他の女だって(継母だって、姉たちだって、町の娼婦だって)シンデレラにとっては当たり前のことなのです。

 

もう時間だわ、とシンデレラは言いました。夢のような時間はもう終わり、魔法が解けた私は、また呪いの生活に戻るのよ、と自分を律します。

ガラスのように美しく繊細で、それでも自分が憎くてたまらないシンデレラを、王子は愛し、そのうえで「そんな女は愛せない」と言い放ちます。それは、王子としては、お願い事のようなものでした。「自分を蔑まずに、自信を持って生きて欲しい、僕は貴女のことが好きなのだから」その願いはシンデレラには届きません。

王子様の好意に値しなかった自分は、父親からも愛されなかったと坩堝に陥ります。父親の「お前のことは愛しているが、妻の命を奪ったお前を許すことができない」という幻聴を聞くことになるのです。

朝起きると、シンデレラの体は動かなくなっていました。呪いがシンデレラを蝕み、張りつめていた緊張の糸が王子によって解かれ、更にまた呪いの責め苦により張られて、ついには糸が切れてしまうのです。

シンデレラはこれまで以上に継母と姉たちをはねつけます。継母と姉たちには、シンデレラの呪いはわかりません。共に生きていきたい、という継母たちからの愛情に共感できないシンデレラは、とうとう「そんなに王子様に嫁入りしたいのなら、踵の骨を折ってガラスの靴が入るようにしたらいいじゃない」とハンマーを持ち出し、下の姉に暴行を加えようとするシーンで物語は終わります。

 

続きは、取り急ぎのハッピーエンドとしての終わりです。

継母は、自らの娘に暴行を働こうとするシンデレラを拒絶しますが、それはあくまでも愛に満ち溢れています。ガラスの靴の持ち主はシンデレラなのだから、自分たちの目の前から消えて欲しい、私たちとは築けなかった幸せも、王子様ならきっとできるであろうと、シンデレラを放り出すのです。そこでまたシンデレラは拒絶されたと感じますが、更に上の姉が追い打ちをかけます。「どんなに愛されたいと願っても、自分が心を開かなければ、何も受け入れることができないこと」を諭します。

正しく、希望のある言葉ですが、呪いの責め苦により、シンデレラの心は更に蝕まれていきます。

 

王子と兵士たちが、ガラスの靴の持ち主を探しますが、シンデレラは、靴を履くのを促されるまで動こうとしません。上の姉が履き、下の姉は容姿が醜いことから後回しにされました。踵を壊そうともそうでなくとも、彼女には姫探しに立候補する権利さえもなかったのです。そこで、歪んだ自信を身につけたシンデレラは、兵の中に紛れ込んだ王子を見抜いてこう言います。

「愛せないと言ったのは貴方なのに、なぜ今更になって追いかけるような真似をするの」と、分不相応にも王子に物申したのです。

 

王子は、シンデレラにかけられた呪いの重さに気づきます。彼女は、愛せないと言われた事実にのみ固執し、前後の脈略や、言葉の真意を汲み取っていなかったのです。なので、王子はもう一度、本当に言いたかった言葉を、ゆっくりと確実に、シンデレラに伝えます。それ以上の情報は伝えません。

「僕は君に、好きだと言ったんだ」と。

その事実だけを、何度も繰り返しシンデレラに言い聞かせることで、シンデレラにかけられた呪いはいつか消えることを、王子も、継母たちも、シンデレラ自身も願うのでした。

 

というのが、書きたかったあらましなんですが、なかなかどうして、文章にするとなると難しいものですわね。

 

今思いついた結末です。

 

シンデレラが我が子を身籠もる時に、呪いを産み落とすことに成功するのです。産まれた子も自分も、元気でいられるということは、愛情というものはそもそも、対価により得られたり失ったらするものではなく、自然と湧いて尽きることがないもの。母親の養分を吸い取って産まれた自分が母親を殺したいう認識を改めたのでした。

二次創作「あたしたちのシンデレラ」

母は、素敵な人だった。ように思う。病気がちな母との思い出はあまりにも少ない。日に一度ベッドに近寄ると、優しく、歌うような囁き声で、私の金髪を梳いてくれた。元々、健康な方ではなかったが、私を産んで益々、その儚い命を削っていったのだという。

「エラ、お母様のご迷惑になるから、あまり寝室に行ってはいけないよ。」

「エラ、お前が元気で健やかにいられるのは、お母様が命を分け与えてくれたんだよ。」

「エラ、お母様はその命を懸けて、お前をこの世に産み落としてくれたんだよ。その感謝の心を忘れてはいけないよ。」

反面、父は素敵ではなかったように思う。父の愛情は時に、私の心を蝕み、昏い闇に落とした。
程なくして、母はその命を落とした。父は、私を亡き骸に近寄らせなかった。母は最期まで美しい人だったとは、使用人から伝え聞いた。

それから父は変わってしまった。家にも寄り付かなくなり、商売に執心した。私は数名の使用人たちと共に、思春期を過ごした。彼らからの扱いは、昔と変わらず私を令嬢のように褒めそやしたが、あまり良い気分はしなかった。居心地が悪かったのだ。
「いいのよ、私のことはエラと呼んで。自分のことは自分でするわ。」
炊事、洗濯、野菜の栽培、そして薪割り。私は、町娘と同じように忙しく働くようになった。なぜだろう。その方が気持ちが落ち着くということもあり、また、健康な自分への呪いでもあった。私は私に呪いをかけたのだ。

父が撃たれて死んだ。その訃報は真夜中、突然に訪れた。雨の通り過ぎた夜、庭の草花に月の雫が映えるとても美しい夜だった。
父の死以上に驚かされたのは、父が再婚をしていたことだった。その女性の名前は、何度か父からも聞いていた名前だった。いい人なんだよ、と父は言っていた。
そういえば、母が亡くなる前は、母の話題が多く、亡くなってからは商売の話が多かった。不器用で孤独な男だったのだと、今なら思えた。

父の再婚相手は、二人の娘を連れて我が家に訪れた。都会の家を売り、幾許かの資金を持ち、この町に越してきたのだ。継母は、昏い瞳をその場だけ輝かせてニコリと笑った。
「はじめましてでこんなことになってしまってごめんなさいね。今日から貴女の家族だと言っても、疎ましいと思うでしょうけれど。」継母はこう付け加えた。
「私たちのことを無理に家族だと思って接する必要はないのよ。ただ、貴女と同じ家で暮らす他人だと思っていて頂戴。」
我が家には似つかわしくない、豪奢な家具を廊下の真ん中に置かせて、継母と姉たちは騒々しく言い合っていた。やれ、どこの部屋に誰が入るのか、旦那様の部屋は空けておくのか、もっと家具を売ってもよかったのではないか、この箪笥を部屋に入れるには一度扉を外さないと、エトセトラ、エトセトラ。
「感じの悪い人たちなんですね。」
ぎょっとした顔を見せた継母と姉たちを見つめて、私は続けた。
「こんなの、強盗みたいなものではありません? お会いしたこともないのに、いきなり家族だなんだと。住み慣れた家を追い出されて、さぞ辛い思いをされているのでしょうね。そうでないと可笑しいわ。こんな厚顔無恥な真似ができるなんて、後ろ指差されても仕様がありませんわね。」
客間に顔を出した使用人が、息を呑む音が聞こえた。
「いいでしょう。恥知らずな父なら、継母もその連れ子の貴女たちも恥知らずなのでしょう。この家の客人として迎え入れましょう。その代わり、この家の使用人たちには暇を出します。タダ飯喰らいが増えるんだもの、使用人を残すだけのお金は残ってないもので。私は自分のことは自分でやります。貴女たちも、同じようになさってください。もちろん、客人として迎え入れますよ。でも、おわかりですか? 貴女方は客人でしかないということ。」
「タダ飯喰らいとは失礼ね、お母様は、この町で商売をするつもりなのよ。都会の風を、この田舎町に吹かせてやれば、お金なんて困らないわ。」
口火を切ったのは、二人目の姉だった。
「あら、そうですか。私も父の跡は継ぎますから、商売の心配はご無用よ。都会の風と仰るけれど、そのドレスはこの町では娼婦にしか売れないのではなくて? 商売女同士、仲良くやってくださいましね。」
私は母の部屋に床を移した。田畑が見渡せる窓には、柔らかい陽射しが注ぐ。この部屋だけは、絶対に犯されるわけにはいかないのだ。


継母と姉たちが、カチャカチャと茶器を鳴らす脇で、私は乾いたパンを咥えながら、竃に火を拵えていた。
「この紅茶、美味しいわね。」上の姉が、福々しい顔を綻ばせた。
「そうでしょう? この間、お母様と一緒に買い付けに行っていたの。とてもこの町では手に入らない高級品よ。」今度は下の姉。
継母はばつの悪そうな顔で、私にバターを勧めた。
「いえ、結構です。ご存知でないかもしれませんが、パンは噛み締めればパン本来の甘みが口の中に広がって、麦のとても良い香りがするんですよ。」
そうね、私も明日はそうしてみるわ、と漏らし、継母はその日一日、口を開くことはなかった。


「シンデレラ、顔に煤がついてるわ。」
そう言い終わる前に、上の姉が、ハンケチーフで私の顔を拭った。ざらざらとした酷い感覚。犬に舐められているような気分だ。
「男の子のような格好はなさらないで、恥ずかしいわ。」
シンデレラ? なんと言ったの?
「えぇ、ありがとうお姉様。私もお姉様たちのように美しく取り繕いたいわ。都会の化粧は町の娼婦たちにはさぞかし人気なのでしょうね。ところで、シンデレラって?」
燃え尽きた灰のエラ。姉の答えよりも早く、脳が正解を導き出した。母を焼いた灰を被り、父を焼いた灰を被り、田舎町で竃と格闘しているような燃えカスのようなエラ。私が見ていないところで、そんな侮蔑を受けていたとは。
「シンダーエラと仰ったのね? 灰まみれでごめんなさいね。でも、私が灰に塗れないと貴女たちは凍えてベッドから出られないでしょう? ベッドから出ることなく、その息を引き取った女性の話はご存知かしら? 私はその女性を燃やした灰を被って生きてきたのよ。何を今更、竃の煤が顔についたくらいで。」
この女は敵だ。胸の底から、頭の神経一本一本にまで、血が巡るのを感じた。この女を決して許さない。私を嘲笑い、母を嘲笑い、父の灰の上でぬくぬくと生きてきたこんな女。人の温もりなどわからないよう、滅茶苦茶にしてやりたい。
「お姉様は美しい顔が汚れないように、お湯でも浴びて来たら良いのではなくって? 町の下水はこの季節、快適なくらい暖かいから早く行かないと仕事を終えた娼婦たちと取り合いになってしまいますわ。」
気がついた時には、姉の腕を掴んでいた。身をよじって抵抗したが、畑仕事で鍛えられたこの体に勝てるものでは決してない。ばん、と玄関扉を開けると、初春のまだ冷たい風が家の中に侵入してきた。この風は貴女と同じ。温もりの残るこの家を凍らせる、冬の残した冷たい風。
「やめて、エラ!」姉がやっとの思いで声を発した時には、私は内鍵から手を放していた。寝間着姿で屋外に放り出されたらさぞ寒かろう。私はその足でキッチンに向かい、パンを一切れ、口に放り込んだ。フライパンにバターをぽんと入れて、竃の火であたためる。バターの溶ける良い香りがして、腹の虫がぐぅと獲物を欲しがった。一度走り出した欲望は止まらない。フライパンを手に持ち、玄関まで歩き、そして、扉を開けると座り込んだ姉の姿があった。頭から熱いバターを浴びせる。
「お姉様、良い香りがするわ。大好きなバターの香りよ。」


城で開催されるダンスパーティーの誘いが舞い込んで来た。能天気な姉たちは、朝から夜までああでもないこうでもない、とドレスを引っ張り出しては、やんや騒いでいる。朝は畑仕事をして、昼は父の残した商売の切り盛りをして、やっとこの時間なのに。
「貴女も行くわよね? エラ。」と、下の姉。
「シンデレラは行かないわ。」と、私。
「エラは働き者だから、貴女たちとは違って、そんな浮いた場所へは行かないのよ。貴女たちも、年頃だからってはしゃいでばかりで。。」
「お姉様たちは行ったら良いのではなくって? ひょっとしたら素敵な殿方と出会える機会かも。」
男に嫁ぐことしか、能のない女。男たちに股を開き、暴虐を乞い、暴力に蝕まれる女。
「そ、そうよね。でも、よかったらエラ。このドレスを着て一緒に行ってくれないかしら?」
上の姉が、趣味の悪いドレスを私の体に当てがおうとして、私が一歩後ずさる。
「結構よ、ありがとうお姉様。」
とてもではないけれど、莫迦みたいな格好で、莫迦みたいな姉たちと、莫迦みたいな乱痴気騒ぎなんて御免だ。私は、この町の商人の一人として、ダンスパーティーに招かれているのだ。チラシのようにばら撒かれた招待状ではなく、会社の名前と、社長としての肩書きと、そして何より、私自身に宛てられた招待状が手元にある。

継母と姉たちはダンスパーティーに出かけた。私は職場に向かい、そこで出迎えの商売仲間を待った。
「素敵なお召し物ですね。」出迎えの男が、汚い息とおべっかを吐いた。
「ありがとう、母の形見なの。」母のドレスを着てみて、意外にも母は瘦せぎすではなかったことを知った。然程手直しもなく、ぴたりと私の体に収まった。
「履物も素敵です。」
これは母の形見というわけにはいかなかった。知り合いの職人に作らせた、透明なガラスの飾りがあしらわれた靴。
「そうでしょう? ぴったり私の足に合うサイズにしてくれたの。」
くるりと回って見せる足は軽やかだ。
馬車に乗せられ、ダンスパーティーが催される城に向かう。
まるでこの馬車はカボチャ。馬はネズミ、従者であるこの男たちは、さしずめトカゲといったところだろう。
では、私はなんなのだろう。母の形見を身に纏い、ガラスの靴を履いたシンデレラ。両親を焼いた灰に塗れた、煤だらけの女。男に混ざって畑仕事をして、商売相手に歯を剥き出す、女とは程遠い生き物。私はこれまで何のために生きてきたのだろう。女は男の仕事をしてはいけない、というのは、女がか弱いからだと思っていた。毎日毎日、身を粉にして働いても私の体は、疲れることも、弱ることも知らない。ただ毎日、打ちのめされ、謗られても、一晩ぐっすり床に入ると、瞬く間に元気を取り戻してしまう。

『エラ、お前が元気で健やかにいられるのは、お母様が命を分け与えてくれたんだよ。』

私の体に満ち溢れる元気は、母から賜ったものである。これだけの体力を分け与えれば、命を燃やし尽くしてしまっても、致し方がないのかもしれない。


ダンスパーティーでは、着飾った娘たちが、同じように着飾った紳士たちと踊っている。
私は商売の話を済ませたら、早々に立ち去ろうと考えていた。
「やぁ。」
やぁ? 誰だったろうか。どこかで見たことがあるような、ないような。
「君も、踊りにきたのかな?」
ない。恐らく初対面だ。初対面の女に対して、何様であろうか。
「はじめまして。踊りに来たわけでは、、いえ、そうです、踊りに来ました。」
女が男に混ざって働くことを、世間を良しとはしない。ともかくここでの仕事は終えたのだ。適当に話を合わせて帰ればいいだろう。
「そうか、僕も久々に踊って疲れてしまってね。よかったら、少し話さないか?」
よくよく見ると、背も高くていい男だ。どことなく父に似ているが、同じ男なのだから父と似ていても不思議ではないだろう。
「えぇ、もちろん。」

その男は、話をすればするほど聡明な男であった。いけ好かなさも思わせる優男ではあったが、どこか間延びした話し方が、張りつめていた気持ちを揺るがせる。それは私に、顔の綻びに気づくたび、きつく唇を結ばせた。
「君はとても面白い人だね。見ていて飽きないよ。」
「僕をどう見えているかわからないけど、僕は紳士だよ。少なくとも、そうありたいと思ってる。」
「聡明な人だから、きっと君の夫となる人は肩身が狭いだろうな。賢い妻は、男をみじめな気持ちにさせるものだよ。」
これだから男は、と笑いながらも、少なくとも悪い気持ちはしなかった。
「よかったら、父と会ってみてくれないかな? 父もこのパーティに来ているんだ。」
女を父親に合わせるということは。
「えぇ、もちろん。」
少なくとも悪い気持ちはしない男と、その父親。初めての感覚が連続して、まるで熱に浮かされたように、男に促されるまま城の廊下を歩いた。途中、継母とばたりと会った。継母は私たちを見ると、顔を強張らせた。動揺するに違いない。ここにいないはずの女の姿が、それも、見知らぬ男について歩く私の姿であれば尚のこと、厄介者がいなくなって清々するだろうか。
ごきげんよう。」
声をかけてみた。自分でも、唇の端が引き攣るのがわかる。
ごきげんよう、それと。。」
継母が男に視線を移すと、男は、知り合いか、と私に耳打ちした。私は頷きながら
「ごめんなさい、それでは後ほど。」
と背筋を伸ばし、継母もつられてにこりと笑った。笑い顔が不愉快な女である。

男の父親という人は、男には似ても似つかない豪快な男だった。不遜ですらある。
「なるほど、息子が見初めるに相応しい聡明なお嬢様のようだ。」父親はガハガハと笑い、あとは二人で過ごすと良いと言って、どこかに消えていった。二分と会話はしなかったように感じた。
「父は、忙しい人だから。それに、気を使ったんだろう。父なりの形でね。」
結局また、元いた場所に戻って、男としばらくの時間を過ごした。父親と話した時間よりも、往復で歩いた時間の方が長かった。あの父親は、この男以上に、どこかで見たことがある。こんなに近くで顔を合わせたことはないが、どこかで、確かに見覚えのある顔だ。

「お父上って、もしかして。」
「君の名前って。」
二人同時に話を切り出して、お互いに笑い合った。
「そう、父はこの国の王なんだ。」
「私の名前はシンデレラ。貴方には似合わない、灰にまみれた女よ。」
「鍛冶屋の娘さんなのか?」
「いいえ、そういうことではなく、なんというのかしら。人の死の上に立つ、不幸を着たような女なのよ。」
「僕だって、人の死の上に立っている。王族とは、そういうものだからね。」
「私たち、気が合いそうね。でも、だめよね、ごめんなさい。」
王族と知って、胸が早鳴る自分の体が恨めしかった。時計を見上げる素振りをして、
「そろそろ行かないと。」
別れを切り出した。私はこの場には分不相応だ。
「待って。」
「待たないわ。」
「わかった。」
男は肩を落とした。
「君は他の女とは違うと思ったんだ。」
「他の女と同じよ。夜が更けると、生き血を啜る吸血鬼になるの。」
「冗談はよしてくれないか。」
男が強く、私の腕を掴んだ。
「初対面の女に触れることは、無礼ではないかしら? それとも、王族の特権なの?」
「僕は君の皮肉屋なところも好きだよ。皮肉屋なのに、瞳の奥が澄んでいるところももちろん好きだ。」
腕の力は抜けていた。つくづくこの男は、私を脱力させる才能があるらしい。
「君と少し話して思ったんだ。君は、綺麗で繊細なガラスのような人なのに、自分自身で煤汚れた乱暴者だと貶めている。」
それで?と口にすると、王子は手を離した。
「そんな女は、好きになれないって言っているんだ。」
「そんな酷いこと! ガラスだって言ったじゃない!」
「酷いことなのか?」
「酷いことよ!」
だって、だって私は。
「ガラスがそんなに好きなら、この靴と結婚すればいいじゃない!」
男の胸に、ガラスの靴を一足突きつけると、私は無我夢中で走った。逃げたのだ。

『お母様はお前のために死んだんだぞ、エラ。お前だけ幸せになったら、お母様が悲しむじゃないか。ずっとこのベッドで、お母様のように瘦せ細り、死んでいくべきなんじゃないか? それなのにお前ときたら、いくらズタズタに切り裂いてもニヤニヤと生き長らえて。これじゃあ、お父さんだって、死んでも死にきれないぞ。』

頭の中で父の声が繰り返し流れた。その声は、私が涙を流し嗚咽をこらえるほどに、強く響いた。


心が壊れたのだと思った。次の日、私はベッドから起き上がれず、気がついた時には陽が高くあがっていた。
畑に行かないと、と体を起こそうとするが、力が入らない。
そういえば、この部屋があたたかいのは、誰かが暖炉に火をつけたからに違いない。そんなことを思って、また私の体は脱力の海に呑まれた。
コンコン。
ノックの音がして、しばらくの間をもって、カチャカチャと陶器が鳴る音がした。更に、コンコン。ノックが鳴る。
「エラ、入るわね。」
入ってきたのは、継母であった。手には盆に、茶器と朝食が載せられている。
「あまりにも起きて来ないから。」
継母は笑いながら、ベッド脇に朝食の支度を始めた。
「大丈夫? 風邪でも引いたの?」
額に手が添えられ、私はほんの少し、髪を梳いてくれた母の指を思い出した。
「大丈夫よ、なんでもない。ただ、昨日は少し疲れただけ。」
「そ、そうよね。お城に貴女がいたから、ちょっとびっくりしちゃった。それに、王子様と一緒に歩いてるんだもの。」
合点がいった。この女は、憐れな私に侮蔑の視線を送るために仕向けられた刺客だ。もしくは、王子と関係を持つ私に取り入ろうとしているのかもしれない。
「えぇ、そうでしょうね。灰にまみれたエラが打ちひしがれているのは、さぞ気味の良い眺めでしょうね。」
「王子様と、何かあったの?」
側の椅子に座ろうとする継母。
「座らないでッ!」
きん、と空気が鳴り響いた。
「お生憎様、王子様の戯れに弄ばれただけよ。みじめでしょう? これじゃ娼婦だわ。貴女たちのことを笑えない。男と同じように生きてきた私が、ただ王子にふいにされただけで寝込むなんて。良い気持ちでしょう? 形勢逆転だわね。でも貴女たちなんて、王子様に近づけもしなかったんじゃないの? 淫らなドレスで淫らな踊りしかできない、意地汚い母親と、その性根を受け継いだ娘たち! 私は夢なんて決して見ないわ。ただ毎日を誠実に生きて、誠実に死んでいきたいのよ。」
「よしなさい、シンデレラ。」
継母が私の手を握った。触らないでったら!
「私の娘を悪く言うのはやめなさい。」
ぱん、と肉が裂ける音が聞こえて、頬に雷が走った。頬を打たれたのだ。私はじたばたと暴れまわる力も振り出せず、力なく笑い惚けるしかなかった。
「忘れないで。無理に家族だと思って接する必要はないけれど、私にとっては貴女も大切な家族なのよ。わかったら、明日からまたいつもの元気な貴女に戻ってちょうだいね。」


王子様が異例の御触れを出したのを知ったのは、それから二日経ってのことだった。ガラスの靴を履いてダンスパーティーに出席した女性を、生涯の伴侶とするというのだ。
町中、ガラスの靴を履いた女の話で夢中のようだった。二人の姉たちも同じようで、なんとかガラスの靴が手に入らないかと話し込んでいるようだった。
「今から仕立てたって間に合わないわ。」
「ガラスの靴さえ手に入れば、王子様と結婚できるのに。」
常々思っていたことだが、うわ言のように同じことを繰り返す悪癖がある。頭が悪そうに見えるから、やめたほうがいい。
暖炉に薪をくべながら、私はふと思い立った。
「お姉様たち、私、ガラスの靴を持っているんです。一足しかないけれど。。」
私がガラスの靴の持ち主とは言わず、母の形見で長年眠っていたことにした。どうやら姉たちは、私があの時城にいたことも知らないらしい。
「だめね、これじゃ入らないわ。」
当然だ。私の足に合わせてしつらえたのだから、赤の他人の足が同じように入ってしまったら困る。
「私も無理みたい、もうちょっと、踵がどうにか入れば。」
嘘ではあるにしろ、母親の形見だと聞いても、この図太い娘たちは遠慮を知らない。靴が割れたらどうするというのだ。
「そうだ、お姉様。こうするのはいかがかしら。」
私は、工具箱からハンマーを取り出すと、下の姉の踵を持った。
「踵が靴に入らないのなら、踵をなくしてしまえばいいのですわ。」


終わり。
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耳をつんざくような悲鳴が聞こえ、どこからか継母が飛んできた。すんでのところで、姉の踵は破壊されずに済んだようだ。
「エラ! 貴女はなんということを。。」
頬を何度も叩かれ、口の端が切れる感覚が走った。
「ガラスの靴を履いていたのは貴女だわ。どうしてそんなこともわからないの! 貴女は王子様に求婚されているのよ? どうして自分だと胸を張れないの? 私たちは貴女の家族でありたいと思っていたし、努力もしてきた。貴女が倒れた時に、みんなで一所懸命火をつけたのよ。畑にだって行ってきた。煤だらけに、泥だらけになって、エラはいつもこんな大変なことをしてきたんだって、見習わないといけないねって。でも貴女の態度は何? 世の中を斜めに見て、人を見下すことと、お金のことばかり! お金なら、私たちの蓄えがありますよ! 貴女と四人で暮らすことになるから、貴女一人をこの家に住まわせることができないから、向こうの家を売って来たのよ。どうして貴女という人は、他人の愛情を受け入れることができないの!」
後半は、絶叫に近かった。上の姉が続いた。
「エラ、私たちは貴女のことを本当の家族のように思いたいのよ。でも貴女がそれをしてくれなかったら、私たちはいつまでも家族になんてなれない。理想的な家族にも、幸せにもならなくてもいいじゃない。この家で、私たちと一緒に慎ましく生きることはできないの?」

家族会議に水を差したのは呼び鈴だった。
「この家に年頃の娘がいると伝え聞いた。我々はガラスの靴を一足、持っている。この靴を履ける少女が、王子の伴侶となる女性だ。」
武骨な顔の兵士がそう告げると、ズカズカと家に入り込んで来る。数人の兵たちの中に、王子の顔があった。そういうことか。
「それでは、貴女が、どうぞ。」と上の姉を促すと、上の姉は形だけ靴に足をあてがった。
「この靴は私には小さくて、入りませんわ。」
「そのようですね、それでは。」
辺りを見回して、下の姉を通り過ぎた兵士の瞳が私を捉えた。
「その必要はありませんわ。」
狭い客間に立ち並んだ制服姿の兵士の中の一人、王子の前に私は立った。
「私は、貴方には不釣り合いな身の丈の女ですわ。どういった経緯で、ガラスの靴の持ち主探しをしているのか知りませんが、貴方自身がお気づきなのではないですか? 好きになれないと言われた女ですよ。」
王子は、目を丸くしてこちらを見下ろした。そういえば、ガラスの靴を履いていない分、身長に差があるのだ。
「僕は、君に好きだと言ったんだぞ?」

おばさんになれないあたしたち

自分のこと「おばさん」扱いするのって楽だよね。あたしたちもついやっちゃう。

 

大きな理由としては、ある程度自分を落としておくことで、落とされた時のダメージを減らすのが1つね。

「あたしなんてブスだからぁ」と同じ原理。あと、それに対して「全然ブスじゃなくない?」を待つのね。

 

もう1つは、自分をあえて下げることで「下の上」を演出できることね。

20代前半の子たちが住んでるHappy island Tokyoは確かに世知辛いのだ。ちょっとかわいいだけだったら、すぐ「顔はかわいくてもおばさん」とか「同じベクトルだったらわざわざおばさんを選ばなくない?」とか言われちゃうので、わざと自分を30代後半から40代が生息するシマに追いやって「その中ではイケてる方」という誤認を誘うわけ。

 

「短所も多いけど、かわいいお姉さん」だと思ってるいけ好かないブスほど、自分をおばさんだと言いたがる風潮は強い。

 

ほんとに自分のことをブスだと思ってるブスとか、イケてる方だと信じてやまないブスたちは、おばさん扱いされるとやたらとムキになりますね。

 

前者は「まだおばさんじゃないもん!」とお怒りになり(もん、の言い方が昭和)

後者は「若い子至上主義っておかしくない?加齢と共に、色気とか魅力とかが増すもんじゃない?」と静かにお怒りになり(でも本人が想像してるのは、ヒラコリとかトワコとかいちいち美魔女)

正直、他人に対しておばさんと罵ることのメリットってなんにもありません。

 

ここでいう「○○だけど、かわいい部類に入ってると勘違いしてる女」は、おばさん呼ばわりされても、余裕綽々とした顔で笑いに変えてきます。

「ミホまだおばさんじゃないもん!ぷんぷんビーム!」とか「そうなのーおばさんなのーかなP」とか「おどりゃこりゃてめぇ!!」とか言ったりします。

 

その場ではニコニコしてても、次に会った時は初対面ということになりますので、若手の皆様にとりましては、粛々と自分の言動の大きさに責任を取っていただきたい。

おばさん呼ばわりはイコール臭い呼ばわりと同じなので、しっかりと「この人になら嫌われても自分には無害」だと判断して使うようにしてね。

 

 

まあとはいえ、他人からおばさん呼ばわりされたところで微動だにしないのが大人の女です。そもそも、事実おばさんだしね。

「ここに空気ありますね!」っていう事実を「空気ないもん!あたし酸欠になりそうだもん!」って質す必要もないわけで。

 

そんなことよりも目につくのが、若い子のおばさんアピールですよ。

 

「あたしも最近すっかり年取っちゃって〜」って、パンと張った肌、重力に負けないマブタ、乱れがちなホルモンバランスにありがちの吹き出物、ありとあらゆる若さのポテトSセットが詰まった若い子が、

視界のどこかでそんなことを言い出す日がいつかきっと来る。

 

若ければ「おい今なんつった?」「てめぇがババアだったらあたしはなんだ?鉄の塊か?メーテルか?」っつって激昂するところですが、

まぁ(そういうところがほんとに若くないんだと思いつつ)聞こえないふりしてそっとしておくことが多いわけよね。

 

そういう、場の構成が読めない子は、意識的にシャットアウトした方が共存共栄できますからね。

 

あたしたち同士でも、もっと年上な人もいれば年下の人もいるわけで、もうそんなことで戦争をするのはやめましょうよ、と。あたしたちは思うんですね。

 

18だろうが30だろうが50だろうが、

「明日の自分は昨日の自分より老いてきる」条件面は同じであってね。

 

もういいよ!はいはい、あんたはおばさん、おばさんね!その中でもイケてる方だと思ってるけど、ほんとにただの何の変哲もないおばさんだからね!どこに出しても恥ずかしくないおばさんだからね!よかったね!はいはい!

 

って優しく接してあげようと思った今日この頃なのでした。

 

 

以上、お題「自己紹介」です。

あたしたちには人の気持ちがわからない

「裏切られた」ってよく言われるんだけど、それってその相手の主観的な話よね?

それをあたしたちに言われても、って思わない?

 

そっちが期待をしましたよ、こっちは期待に応えようと努力しましたよ、でも結果として頓挫したことを、裏切られたって言われるの。

フェアじゃなくない?

 

じゃああたしたちなんて、あんたには一切合切期待も何もしてない。

恋人だったら、浮気しないでとも思わないし毎週会って欲しいとも、アナルを舐めて欲しいとも思わない。

仕事だったら、残業時間を減らしてとも、給料を上げてとも、エロ尻男子に1時間に一回目の前で屈んでくれなんて思ってない。

 

あたしたちは何も要求してないのに、期待に応えられなかったくらいで何を言ってるんだ。

 

だから、ここは譲歩をするべきなの?

あたしたちは、あなたのこの要求を飲む努力をします、だからあたしたちはこれを期待してるわ、と。

 

でもさ、そんなことしなくても、仕事候補なり恋人候補なりは、他にあるわけじゃない。

 

建設的な議論ができないあたしたちの問題?

 

あたしたちとしては、これまで我慢しながら、うまいことやり過ごしていこうと努力してきたつもりだったのよ。

 

癇癪起こして危害を加えたらよかったのかな。

そしたら期待なんかされなくなるじゃない。

 

あたしたちは、がんばるのが当たり前だと思ってる。

がんばって、耐えて、やり過ごして、

無理かも、って思ったら根を上げる。

 

それで、譲歩する余地がない交渉相手と何を交渉するの?

 

デカチンポが痛いから、アナルセックスしたくないって言ったら

「デカチンポが大変なのはタスクとして認識しているし、今後痛くならないように改善していこうと思う。だから今は痛くても我慢してればいつか痛くなくなるから、アナルセックスして欲しい」って言われてもさ。

我慢して続けろよ、って意味で、何にも変わってなくない??

 

ティーネイジャーの頃からずっと言われてた。あたしたちには他人の気持ちがわからない!

 

人手不足だから残って欲しいって言われたけど、それは会社の予算の話で、予算ギリギリの人員しか雇うつもりがないことと、あたしたちが居残ることで人手不足が解消されること(出て行くことで人手が不足すること)はなんの関係もないっていうか、そりゃそうよねって話だと思うのよねー。

あたしたちの合鍵

半年前に付き合って、3ヶ月くらい前から音信不通になった彼氏がいます。

喧嘩をして、それは十中八九こっちが悪いんだけど、その後の相手の態度がどうしても納得いかなくて、

「わかったわかった、あたしは精神病で今はまともに話せる状態じゃないから距離を置きましょう」と近づかないで宣言をしまして。

 

それでこちらは順調に回復に向かって(まぁ今の職場でも病んでるけど、それは別の話ね)

1人の生活を、今思えば勝手に1人の生活を満喫してたわけです。

飲み屋で男の子にちゅーされたりね。にゅふふ。

 

全然終わってなかった。むしろなんで勝手に終わったことになったんだろう、って自分でも不思議に思った。

 

今日ふとしたタイミングで遭遇する機会があって、こちらもあちらもしたたかに酔って

「このタイミングじゃないとできないと思うからさ」っつって、お互いに預け合ってた合鍵を戻した。

 

その直後に「この人俺の彼氏なの」って話になって、

「あ、そっか。彼氏っていうのは、口約束でも約束なんだ」って思い知らされた。

 

自分でもひどい人間だと思う。

病んでる時には「あなたがいないと何もできない」ような顔をしておいて、いざ用事が済んだらもういいかなって見切りをつけるなんて。

 

よく「精神的に辛い時を支えてくれたのが今の恋人で」っていう話を聞くけどさ。

その人たちは、寛解した時にも相手のことを受け入れられた(好きでいられた)のかしら。

なんだか、全く別の人間になっていたような気分で、頭にかかっていた霧が晴れたら、それまでの感情が、良い意味でも悪い意味でもクリアになってしまった。

 

 

そもそも、彼氏とか欲しくないし、いらない。世の中は辛くてきついもので、その人生に誰かを付き合わせるのが、後ろめたく感じる。

 

あたしたちに「とっておきの誰か」は必要じゃないのかもしれない。体面良く言うと「誰か特定の人がいると全てが壊れちゃう」し、体面悪く言うと「弱ってる時じゃないと誰も必要ない」ってことだと思うのよね。

 

彼氏恋人の関係が、そもそものところで自分のライフスタイルと合わないんだけど、それを相手にどうやって言おう。

また弱ってから優しくしてね、それじゃ嫌な女にもほどがある。

別の誰かだと思ってまたイチから口説き直して、それも嫌な女。

 

結局悪者になるしかない。

 

間違ったことをしているのは、ここ半年重々承知。

仕事でも恋愛でも、正しいことなんてしてきてない。

でも自分で自分を責め続けて、その傷の方が辛いから「そんなに自分を責めなくても良くない?」って誰かに言って欲しい。

 

誰もあんたになんて興味ないよ。

あんたのことを好きな人は、そんなことで嫌いにならないよ。

すぐに結果を見極めなくてもいいよ。

 

どれでもいいけど、多分「人生は長いから、誰かを傷つけたり傷つけられたりうまくいかなかったりするけど、それで自分を責め続けても解決したことにならない」っていうのを教えて欲しいのよね。

 

自分とは付き合えなくて、自分は自分を好きになってくれないことが辛いわね。

 

そんなわけで若い男の子に人生めちゃくちゃにされたいわ。

 

 

あたしたちと丁寧な暮らし

ツイッターに書いたことをまとめました。

なんか人のネタをパクって書いただけなのにすげえふぁぼられてんの。びっくらこいた。

 

私の考える丁寧な暮らし

 

レベル1

食後に熱いお茶を飲む
刺激の強い光を避ける
ボディクリームを塗る
明日の予定を立てる
LINEスタンプはどうしても欲しいものだけ買う

 

レベル2
毎晩歯磨き+フロスで念入りに掃除する
夕食に汁物は欠かせない
朝起きたらカーテンを開ける
毎日湯船につかる
土曜日だけは夜更かしをする

 

レベル3
シャワーから上がる時は簡単に掃除をする
トイレが汚れないように先にトイレットペーパーを敷く
盆と正月には実家に帰る
寝る前に苦手な人のことを考えてちょっとユウウツ
いいオイルを毎日取り入れる

 

レベル4

Facebookでイイネする
ツイッターに悪口を書かない
他人の男を寝取らない
友人を口汚く罵らない
全裸で踊らない

 

レベル5
相手に気づかれずに背後を取る
失言は社会的な死を意味する
人生とは戦争と革命、平和のワルツである
女子力は目に見える
内面の美しさは輝きとなって現れる

 

補足1

レベル1は「工夫」レベル2は「決め事」レベル3は「規律」レベル4は「戒律」レベル5は「思想」
丁寧な暮らしとは自己の神格化を目指す宗教である。

 

補足2

丁寧な暮らしは、はじめは「毎日の充実」から入るけど、最後の方は「相手が痛みを感じる前に殺してあげる」「尊い犠牲の上に成り立つ平和」「目に見えないものが見えるようになる」とか、神性を帯びてくる。

 

 

昔ねんごろだった男を「丁寧な暮らし」に奪われてから、丁寧な暮らしに対しては一家言ある。

丁寧な暮らしをしたい、と言って蒸発してしまったの。。

 

 

 

あたしたちの母性

2016年は、もっぱらあたしたちの中ではなかったことになっているんですが、それももうそろそろ落ち着きはじめて、やっぱ朝起きて8時間働いて、疲れて帰って夜に寝るのって、健康的でいいことだわね。

 

今までは、なんか自分の中で引け目というか「大人としてちゃんと働かねば!」と思ってたんだけど、今思うと、30まで惰性で生きてきて、これから逆転ホームラン打つのってすんごい大変。

あたしたち、世間体のためだけにそこまでして生きられない。

 のんびり生きていこうと思った次第です。

 

そうはそれで、最近のあたしたちは母性がすごい。

液体だったらじゅーじゅー出てくる。

かわいい男の子に会いに、飲み屋に通い、トロトロになって帰ってくる。たのしい。

 

元々「ジャニーズの子の母親になりたい」という欲望があったあたしたち。

ククレカレーを持って帰ってきて「カレー作る?」って聞かれたい。

 

性欲では全然ないのよ。

抱いて寝たり、濡れた体をバスタオルで拭いてあげたりしたい。

 

今週はバレンタインウィークなので、チョコを持って行って、一枚は渡して、もう一枚で「ずっと前から好きでした!」ごっこをしてもらおうと画策中。

 

たいして面白くないね。元気ですよ、という話でした。