あたしたちと高田馬場

ギョッとすることを言うけれど、昔売り専で働いていた。

昨日入った居酒屋が、ちょうど昔使ってた個室(普通の綺麗なマンション)の真向かいにあって、なんだか懐かしくなった。

色んな人に会って、色んな嫌な目にあったけれど、今思い出すと楽しかった記憶しか思い出さない。

もちろん、命の危険を感じたことは絶対忘れられないけど。。

「道を歩いてた子がかっこよかったから、それが指名した君だと思ってビックリした」みたいな、わざわざお世辞みたいなことを言う人もいてびっくりした。
当時から歩き姿はドオカマだけど。

PSPやDSを買い与えられたり、ボーナスが出たからって倍の金額をもらったり、ひたすら金金金の日々だった。
そのくせ、お客にあれこれ文句つけて、できないことも多くてほんとーに嫌なやつだった。

ふふふ、懐かしい、と思って。

勘のいい人ならわかるだろうと思っていたけれど、改めて文字にするとなんだか感慨深い。

なんだろうか、あたしたちは誰からもそのことで批判を負わない、そんな安心感がある。
20代半ばから後半くらいまでは、なまじ自分に市場価値があって、あたしたちも市場価値があると思っていたから、それがなくなった分、身が軽くなった。

なんで売春なんかしてたんだろう。
と今になると思うけど、当時は世の中で「社会人」として生きるのが怖くてできなかった。居酒屋でもTSUTAYAでも、それこそ18歳未経験可な正社員でも、なろうと思えば何にでもなれたのに。

何にでもなれたからこそ、自分にとって長所となりえる美しさを売り物にしたとも言える。
今は社会人経験も積んで、長所というか、自分の「ウリ」みたいなのがあるけれど。

売り専のあたしたちはなんにも持ってなかった。
なんにも持ってなかったから、ただひとつある体でお金を稼ぐことが当たり前だと思ってた。

最後になるけれど、未だに「売り専を買う」という表現には慣れません。
指名する、とか呼ぶ、とか、エッチしてもらう、とか、お願いする、とか、色んな表現方法があるのに、なんで「買う」なんだろうと思う。
もちろん、その時間を買って、男の子を買って、その対価を支払うのだから「売り」に対して「買い」というのは当たり前なんだけど。
マナーというか、礼節というか、教養?めいたものが欠如しているように見えてしまってギョッとしてしまう。

もちろん、そんなの関係ないよ、売女なんだから、と言われればそれまでなんだけど。
私がそういうお客とこれまで会って来なかったからかな。そういう人はそもそもお客ではないからなんだろうか。